「エピジェネティクス」。聞きなれない言葉だと思います。これは、胎児期に母親が食事を制限していたり病気だったりで栄養状態が悪かったりした場合や、乳児期に十分な栄養が摂れなかった子供が、その後普通の栄養状態になっても低身長のままである現象のことを示しています。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。母親のお腹の中で常に飢餓状態でいる胎児は、自分の身を守るために少ないエネルギーで生きられる工夫をしなければいけません。それはすなわち、自分の身体を小さくすることに他なりません。この場合、母親が高身長で、子供が身長が伸びやすい遺伝子を引き継いでいたとしても、その働きは十分でなくなってしまいます。40週で約5000倍の大きさになる胎児期に十分な栄養を摂れないことは、当然生まれてからの健全な生育にも影を落とすのです。

また、近年の研究で小さく生まれた子は早熟になる傾向があることがわかってきました。これは特に女の子に多くみられる現象で、初潮が通常より1、2年早まることもあるそうです。初潮後身長は平均6cmほど伸びて止まりますが、身長が伸びる期間が通常より1、2年短いということになり、十分に大きくなれない恐れがあります。