Aくんは出生時からかなり身体が小さく、乳幼児期はマイナス3SD~マイナス2.5SDというSDスコアでした。出産時に特に問題はなく、ご両親の身長も平均程度でしたが、成長速度が遅いということで受診されました。

成長ホルモン分泌能検査には5種類あり、それぞれ違う種類の成長ホルモンを用いた検査を行いますが、Aくんの場合全ての種類の成長ホルモンに分泌不全がみられ、重度の成長ホルモン分泌不全と診断されました。このまま放置するとSDスコアがマイナス3SDのラインで推移し、考えられる最終身長は150cm未満となる可能性もあることから、6才から成長ホルモン補充療法を開始しました。週に体重1kgあたり0.165mgの成長ホルモン製剤を毎日注射し続けたところ、11才でマイナス2SDまで伸びました。その後13才で思春期が訪れ、性ホルモンとのバランスを調整しながら治療を継続、その結果15才でマイナス1SDを上回り、17才で平均身長を超える172cmまで伸ばすことができました。

Aくんの例は、早期の受診、本人や家族の治療に対する粘り強い姿勢が功を奏し、さらにうまく思春期のラストスパートを引き出せた結果といえるでしょう。